FORESTRY
山作業とは
「育林」「山作業」という言葉を聞いても、具体的にどんなことを
するのかイメージできる人は少ないでしょう。
では、山作業とは実際にどのようなことをやっているのでしょうか。
まず、大前提として。自然を守るとは一体どういうことなので
しょうか。人間が全く手をつけずに自然をありのままの状態にして
おくのが、自然を守るということなのでしょうか。
そう思っている人も多いと思います。しかしながら答えは違います。
人間が手を加えないありのままの自然が必ずしもよいとは言えません。
人間が手を加えることで自然が保全されることだってあるのです。
たとえば、現在問題になっている問題として里山の保全があります。
かつて(エネルギー革命以前)は、人間が近くの山から薪などを
とって燃料に使っていました。
そうすることで、自然のサイクルの中に人間の薪をとるという行動が
組み込まれ、その場所の生態系は維持されてきました。
ところがエネルギー革命以後、人間が燃料を電気やガス、化石燃料に
頼るようになっていくと、次第に山から薪はとられなくなり、生態系
が崩れ、山が荒れ始めるという問題が発生しています。
・地拵え(ぢごしらえ)
雪が降る前の秋から冬に行う植樹の準備作業・整地作業のことです。
植樹場所の雑草や低木をノコギリやナタで除去し、除去した低木をスジ状に重ねて畝を作ります。
地拵えは、専門知識が要らない、誰にでもできる簡単な作業です。
①ノコナタで低木を伐って適当に集める
②巻き落とし棒で低木を転がし落としてスジ状に集める
③最後に杭を打って固定する
・植樹
名前の通り苗を植える作業です。
森の会では近年、針葉樹林に広葉樹を植えて混交林化というものを進めています。
さて、本題の思惟の森の会の山作業についてです。
私たちの山作業は、七滝山とオマルペ山という2つの山を中心に行っているのですが、この2つの山は、70~80年代に思惟の森の会が植林したスギやアカマツの人工林になっています。
これも大前提なのですが、人工林において木は植林するだけでは育ちません。
現在、日本全国で高度経済成長期以後に植林された若い人工林が手入れされずに、荒れた状態になっているという問題が起こっています。
では、人工林の育林にはどのような作業が必要なのでしょうか。
・下草刈り
特に植えたばかりの若い木は、定期的に周りの下草を刈ってあげなければ
いけません。大きい木とは異なり、下草に養分を奪われて必要な養分を
十分に摂ることができず、生長が遅れてしまうからです。
木が生長すると日光が適度に遮られて下草もあまり生えなくなるので、
ある程度の大きさに育つまでの植樹後5~10年間は必要な作業です。
主に夏に行い、雑草だけではなく低木を刈ることもあります。
・除伐
植樹後10~20年目に適宜行う作業です。
ノコギリやナタを使って雑木(広葉樹)や病気の木を伐採します。
育てている針葉樹が周囲の広葉樹に負けることや、病気(マツコブ病
など)が感染することを防ぎます。
・間伐
植物を育てた経験がある人は、間引きという言葉を知っていると思います。間伐は、この間引きを木に置き換えたものだと考えてください。
若い樹木は生長するにつれて近くの樹木同士で養分を奪い合い、生長が抑制されてしまいます。
また、木と木の間隔が密になると土に降り注ぐ日光の量が減少して、土壌を安定させる下草が生えない暗闇の森になってしまいます。
すると、十分に養分が行きわたらなくなった木は弱っていき、「緑の砂漠」と呼ばれるような、雨風で倒れる弱い森林となってしまいます。
森林を健全な状態に保つために、植樹後15~50年間、細かったり曲がったりしているような木を伐ってあげる作業が間伐です。
・畝づくり
除伐や間伐の際に出た木を数メートルごとに切り、斜面に平行に並べる作業です。
こうすることで土壌の流出を防ぐことができるほか、斜面が歩きやすくなります。
・枝打ち
枝打ちは主に木の生長が止まっている10~3月に行う作業で、長い枝打ちノコなどを使って枝を切り落とすことです。
これによって、病気のもとになりやすい枯れ枝を除去し、
病害虫を防ぐことができます。
この作業を行わないと、枝ばかりが太って幹に十分な養分が
行き届かないだけでなく、節のあるデコボコした木になって
しまいます。
また枝打ちには、間伐と同じように、適度に日光を取り入れて下草を茂らせ、安定した肥沃な土壌を保つという役割もあり
ます。
・主伐
材木として出荷する際に、その区域の全ての木を切り出す作業です。
森の会の山で主伐をするのは何十年も先の話になりそうです。